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執筆者の写真神戸市役所センター合唱団

浦島太郎 木津川計一人語り劇場&うたう会 奥深いお話を55人のお客様が楽しみました

「・・・ある日、助けた亀に連れられて・・・」に始まる昔話「浦島太郎」。

「いったい『浦島太郎』の物語は何を言おうとしたのでしょう。これほど質問の抽出をいっぱい持った昔話はないのです。その中でもキーポイントは玉手箱なんです・・・」今回も、出だしから一人語りの世界に引き込まれます。

この昔話「浦島太郎」がテーマとしたのは三つある。その一つが「若さへの願望、不老長寿願望」、二つ目が「理想郷、ユートピアで暮らしたいという願望」、そして三つ目は「ユートピアは幻想である」。

「歳月を封じ込めた玉手箱の中身」の謎解きが、「葵上」「安達原」「道成寺」の能の裏切られた女の怒りのすさまじさを演ずる三演目から語りはじめられました。そして、三つのテーマが中国唐時代の「枕中記」、「邯鄲一炊の夢」、芥川龍之介の「侏儒の言葉」、さらには歴史や世界情勢の分析にまでにおよび繰りひろげられます。

「即ち、ユートピアは幻想である。このことを『浦島太郎』は教えてくれていたのです。」と、しかしここで終わらないのが木津川ワールド。「では、ユートピアは実現不可能なのか、所詮夢物語なのか、もう少し考えてみましょう。」と問いかけられます。「浦島太郎は竜宮城というユートピアで毎日毎日ご馳走を食べ、タイやヒラメの舞踊りを見て、乙姫との満ち満ちた暮らしから、乙姫の引きとめも振り切り、なぜ苦労の多い元の生活に戻ろうとし地上に帰ってきたのか?」「みずからの手と汗でものを採り、造り、育てることこそが人間の人生だ。そのことに浦島太郎は気づいたのです。」そういう地上を造らなければユートピアは崩壊する、という考えが奥底に秘められている。サミエル・バトラー「エレホン」や大川悦生「うらしまたろう」あとがきを引用し考察され、「『浦島太郎』は万葉時代のSFに止まらず、人間の生き方の根本を教える物語であった。」との言葉で幕が下ろされました。

おお!今回もなんと奥深い展開であろうか。参加者はコロナで参加を躊躇された方も多かった。早く落ち着いて多くの方に「木津川ワールド」に浸っていただきたいものです(ここでは感動をどうしてもうまくお伝えできなくてゴメンナサイ。是非、生「一人語り」お聴きくださいますようお願いいたします)。

続く第二部うたう会は、「四季の歌」で始まり「希望」「学生時代」と。伴奏陣はピアノ東浦とギター田中団長、司会は「一人語り」はこのコンビで決まりなのか?なぜか真木・村川の師弟コンビ。

「語り」の余韻の中、「忘れな草をあなたに」「遠い世界に」と続き、途中木津川先生からも今年は「神田川」のリクエストもいただき、また客席に中田進先生のお顔を発見し、「あなたが夜明けをつげる子どもたち」と木津川先生への「紅葉」と2曲のリクエストも交え、コロナ禍の中、工夫とフィジカルデスタンスの会場で、「生きること」を噛みしめうたいました。「故郷」「灯」「折り鶴」等のリクエストもあり、核兵器禁止、平和への思いも新たに「そんな町を」、エンディング「たんぽぽ」まで、アッという間の時間を過ごしました。

万葉のSF「浦島太郎」がこれだけの奥深さ。次回「一人語り劇場」は、宇宙に馳せられるより深遠なテーマ「かぐや姫」。今から待ち遠しい!コロナが落ち着きより多くの方とともに「木津川ワールド」体感したいですね!! (事業普及部)


アンケートより(ご協力ありがとうございました)


◆限りなく深く、人生、社会、そして「明日」に向かって生きる大切な視点を、なん と素晴らしい中身、そして語り。感動しました、ありがとう!

◆浦島太郎の話、すごーく面白かったです。期待を裏切らない。さすが木津川計一人 語り!!

◆息子を誘って、初めてですが、聴きました。楽しいひとときでした(楽しかった? 楽しめました?・・・かな?)。

◆今回も素敵なお話をありがとうございました。木津川先生のお話で「浦島太郎」の 世界観に引き込まれ、あっと言う間に感じました。玉手箱が何を表し、何を伝えた いのかと いうことを知ることができ、「浦島太郎」のお話の見方が変わり、とて も勉強になりまし た。来年の「かぐや姫」も楽しみです。本日はありがとうござ いました。

◆面白いお話を聞かせて頂いてありがとうございました。浦島太郎の話は知っていま した が、あまり深く考えた事はありませんでした。地上と竜宮城は時の流れが違 うので、地上に戻った浦島太郎が周りに 知った人がいなくて一人ぼっちになっ てしまって、あるべき本来の時の流れ に戻った方が良いというような話かと 思っていたので。乙姫様が怒っていた んですね。(乙姫様がそうした方が良 いと思ってした事と思っていたので) 今までイメージしていたものと全く違 うお話が聞けてとても面白かったです。





■一人語り劇場とは何か 木津川 計


「一人語り劇場」を始めて十四年目に入りました。一人で芝居の何役をも語り分けるのです。実際、演じると「一人芝居」ですが、私は演技ができませんから「一人語り」なのです。

 芝居通りに登場人物の台詞を語るだけなら、その芝居を観た方がいいに決まっています。「一人語り劇場」という形式の、いまのところ日本で唯一の語り手である私は、その芝居の時代背景や劇作家や登場人物などを独自に解釈して、ストーリーの間で語るのです。

 一作目の新国劇「瞼の母」と「一本刀土俵入り」は劇作家の長谷川伸と、ヒーロー像の違いを語りました。即ち、平和な時代にはこころ優しいヒーローが、戦争の時代にはこころ猛々しいヒーローにとって代わられる事を説明したのです。二年目の新派劇「金色夜叉」と「婦系図」では、明治以降の金権主義と女性を犠牲にして男性が偉くなる男性本位の立身出世主義、その裏面を創りだしました。三年目の新国劇「王将」では、不世出の棋士・阪田三吉がなぜ1960年にフィーバーしたのかを論じたのです。

 10年「無法松の一生」は、戦争と検閲、“無法松”が未亡人に捧げる慕情の美しさと切なさが主題です。「語る落語」では、なぜ落語に女のアホがいないその理由を明らかにしながら落語が何を笑い、笑っていないのか。庶民の生活や願いや発想、人間の心理を描く面白さを語りました。「曽根崎心中」では天下のご政道に逆らった心中の教える無惨な事実が文学とは何か、その本質を明らかにしました。







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